犬が吐いたとき考えられる病気一覧表

犬が吐いた時

犬の「吐く」は大きく分けて2つに分類されます。

まず1つは、【吐き出し】もしくは【吐出(としゅつ)】と呼ばれるもので、食べ物が胃に入る前に何らの原因によって逆流し吐き出してしまうことを言います。

特徴としては食べた直後に勢いよく吐き、吐いたものは未消化で、食べたドッグフードがそのままの形をしていることが多いです。

また、食道の形に沿って細長い形をしていることもあります。

そしてもう1つは【嘔吐】と呼ばれるものです。

嘔吐は胃で消化されたものを吐き出すことを言い、吐くときは体を波打たせるような動作(吐く前兆)があります。

「吐き出し」は前に向かって吐くのに対し、「嘔吐」は下を向いて吐くのが特徴です。

 まずは「吐き出し」か「嘔吐」かを見極めることが大切です。

吐き出し(吐出)の場合に考えられる病気一覧

巨大食道症(食道拡張症)

犬の食道が何らかの理由により拡張し、食べたもの・飲んだものを正常に胃に送り込めなくなる病気。先天性のものと後天性のものがあり、子犬~老犬までどんな子でも発症する可能性があります。

【症状】

食後数分~数時間で食べたものを勢いよく吐きだすのが最大の特徴で、よだれや食欲不振を伴うこともあります。

また、うまく飲み込めないことから十分な栄養が摂れず、次第に体重が減少していきます。

そしてこの巨大食道症を発症した約65%の犬が、食べ物が胃ではなく肺の方に流れてしまう「誤嚥性肺炎」を併発します。

予後が悪く、発症した80%の子が2年以内に亡くなるというデータがあります。

食道梗塞

食べ物や異物によって犬の食道が完全にふさがり、食事が出来なくなった状態のことを言います。

犬は喉を通るサイズのものは丸吞みしてしまう習性があるため、こういった誤飲事故は珍しくありません。

原因となるものはボール、犬用ガム、骨、おもちゃ、大きいお肉、人間の髪の毛、毛玉など様々。

【症状】

食道が完全にふさがっている場合はすぐに「吐き出し」「よだれ」「咳」といった症状が出ます。

一方、ふさがり方が不完全な場合には食後しばらくたってからの嘔吐など一見詰まっているようには見えないこともあり、獣医さんでないと判断が難しいこともあります。

右大動脈弓遺残症

犬が母親のおなかにいるときに大動脈が正常に発達しないことで起こる先天性心疾患です。

ほとんどが離乳直後に発症するため、ある程度成長した犬が新たに発症することはほぼありません。

【症状】

今までミルクを飲んでいた子犬が離乳をし、固形物に変えた途端に吐くようになるとこの病気が疑われます。

食べては吐くを繰り返すため体重が減少し、また食べ物が肺に流れてしまうことで「誤嚥性肺炎」を起こして死に至る子も少なくありません。

「嘔吐」の場合に考えられる病気一覧

急性胃炎

急激に起きた犬の胃内部の炎症の総称。原因は多岐にわたり、腐敗した食べ物や水、有害な植物や毒物の摂取、または薬剤や寄生虫、ウイルス性疾患、細菌性疾患、ストレス等で発症します。

【症状】

現れる症状は原因が何かによって違ってきますが、共通するのは突然の激しい嘔吐を何度も繰り返すこと。

軽度であれば嘔吐以外の症状は見られませんが、重症になってくると脱水症状や腹痛、食欲低下などが現れます。

慢性胃炎

犬が慢性的に胃が炎症を起こしている状態のこと。原因は急性胃炎の延長であったり、尿毒症や胃潰瘍、アレルギーやストレスなど様々です。

【症状】

急性胃炎同様、原因にもよりますが、嘔吐や食欲不振、体重減少、なんとなく元気がないなどが挙げられます。

また、おなかを触られるのを嫌がったり、粘膜にひどい炎症が起きていると血を吐いたりすることもあります。

胃潰瘍

犬の胃が胃酸やペプシンにより胃粘膜が傷つき、ひどくなると胃に穴が開くときもあります。

腎不全、肝不全、ポリープ、リンパ腫、肥満細胞腫、ジステンパー、パルボウイルス、ストレスなど原因は様々。

【症状】

嘔吐が代表的な症状。胃の出血により、嘔吐物や便の中に血が混じることも。他には発熱、食欲不振、腹痛、体重減少などが見られます。

胃捻転・胃拡張

読んで字のごとく犬の胃がねじれたり広がったりする病気で、胸が深い犬種(シェパード、ドーベルマン、ボルゾイ等)に多く発症します。

犬が食後に大量の水を飲んだり激しい運動をした場合に起こりやすいため、食後はケージに入れるなどして安静にさせる必要があります。

【症状】

食後2~5時間程で突然犬のお腹が膨らんできて、吐こうとしても吐けない状態(空嘔吐)になりヨダレをダラダラ流します。

またおなかを触られるのをとても嫌がります。胃捻転も胃拡張もどちらも急激に悪化して、放置すれば死に至ります。

腸閉塞(イレウス)

何らかの原因により食べ物が犬の腸管内を通過できなくなった状態のことを言います。詰まりやすいものとしては小石やおもちゃ、骨などが挙げられ、異物以外の原因としては腫瘍や大量の寄生虫などがあります。

【症状】

詰まった場所や程度により症状は異なりますが、元気がなくなる、食欲不振、嘔吐、腹痛が一般的な症状です。腸が完全にふさがっていない限りはなんとか排便は可能ですが、完全にふさがってしまうと命の危険すらあるため早急な処置が必要です。

腸重積

犬の腸が腸の中に入り込んでしまう病気。子犬に多く発症し、寄生虫や腫瘍、ウイルスが原因として考えられています。

【症状】

嘔吐や食欲不振、腹痛、腹部の膨らみ、ショック症状など。犬がおなかを痛めているときは前足を延ばして床に胸に付け、お尻をあげるポーズをとることが多いです(背伸びの格好です)。よく観察してみてください。

細菌性腸炎

細菌が原因で発症した犬の腸炎。飼育環境が衛生的でなかったり、汚れた餌・水を摂取することで感染します。サルモネラ菌、カンピロバクター、カビなどが原因となる細菌として挙げられ、家に来たばかりの子犬や老犬などが抵抗力のない時に感染すると発症します。

【症状】

下痢、嘔吐、食欲不振、腹痛、脱水症状など。下痢は水っぽい感じだったり血混じりだったりいろいろです。縁がかった粘膜が一緒に出ることもあります。

出血性腸炎

小型犬に多い疾患で、大型犬の発症は比較的まれ。若くて健康的な犬が突然発症し死に至ることもある怖い病気です。現在の医学ではその原因がなんなのかはまだ解明されていません。好発犬種はシュナウザー、ポメラニアン、プードル、ダックス等。

【症状】

突然の激しい出血性の下痢(血便)が最大の特徴です。この時の便は「ゼリー状」「ジャムのよう」「ケチャップのよう」と表現されます。そして数時間の間に嘔吐や元気消失、食欲不振などが現れます。

急性肝不全

急性肝不全は、何らかの原因で犬の肝臓が機能しなくなった状態のことを言います。一般的には肝臓の20%が生きていれば正常に機能することが出来ると言われているので、80%以上が機能しなくなってはじめて「肝不全」と呼ばれます。原因は色々考えられますが、毒物や薬物(ステロイド、駆虫薬、雑草に付着した除草剤、鎮痛剤など)の摂取、レプトスピラ症などの感染症、貧血、熱射病、敗血症、ショックなどです。

【症状】

元気がなくなり、食べ物を一切受け付けなくなります。他にも嘔吐、下痢、発熱、黄疸(白目や歯ぐきが明らかに黄色くなる、異常に黄色い尿が出る)などの症状が現れます。

慢性肝炎

犬の肝臓が慢性的に炎症を起こしている状態を言います。原因は薬物・毒物の長期的な摂取や感染症、免疫障害あなどが挙げられます。ベドリントンテリアとウエスティに関しては遺伝的に肝臓に銅が貯まりやすいため発症例が多いと言われています。同様にドーベルマンやコッカーも遺伝的要因があるのではと考えられています。

【症状】

初期のころはこれと言って特徴的な症状がなく、「なんとなく元気がない」「食欲がない」と言った感じなのでどうしても見過ごしてしまいがちです。進行するにつれておなかに水が溜まる「腹水」や白目や尿が明らかに黄色くなる「黄疸」が症状として現れ始め、死に至ることもあります。

肝硬変、肝繊維症

慢性的に犬の肝臓が炎症を起こしていると犬の肝臓はしだいに繊維化し、やがて肝硬変になります。肝硬変が全体に広がり、正常にはたらける肝臓が20%以下になると「肝不全」と呼ばれるようになります。完治させることは非常に困難で、生涯治療を続けていく必要があります。

【症状】

これも肝不全と同じで初期では目立った症状はありません。緩やかな体重減少や食欲不振が見られるくらいでしょう。飼い主が腹水や黄疸、血便といったパッと見てわかる症状に気付いた時には病状がかなり進行してしまっていることがあります。

膵炎

膵炎とは自らの膵臓を消化してしまう病気のことを言い、中年齢の太ったメス犬に多発します。原因は様々で、偏った食事(高脂肪食)、肥満、高脂血症、利尿剤の投与、ウイルス感染、寄生虫感染、アジソン病、免疫介在性疾患など多岐に渡ります。ただシュナウザーに関しては遺伝的に発症しやすいと言われています。

【症状】

ほとんどの場合が嘔吐と下痢を同時に起こします。他の症状としては食欲不振や脱水症状、発熱などがあり、重症化すると嘔吐物に粘液や胆汁が混じったり、便に血が混じったりします。また、炎症を起こしている膵臓が激しく痛むためショック状態に陥ることがあります。

急性腎不全

数日~数日で急激に腎機能が低下する病気のことを言います。腎臓は75%がダメになると本来尿として体外へ排出すべき毒素や老廃物を排出できなくなります。

【症状】

食欲が全くなくったり、嘔吐、下痢、元気消失といった症状が突然現れ、その後急激に悪化していきます。原因がどこにあるかによっても違ってきますが、尿が少なくなったり、場合によっては全く出なくなったり、けいれんを起こす子もいます。

慢性腎不全

腎臓の機能が徐々に低下していき、全体の75%が失われた状態のこと。原因は不明なことが多いですが、急性腎不全から移行したり、リンの過剰摂取、糖尿病、腫瘍、遺伝性疾患、自己免疫疾患などが考えられています。一度機能が低下した腎臓は二度と元どおりになることはありません。

【症状】

初期はほとんど無症状に近く、進行するにつれて嘔吐、下痢、便秘、食欲低下、体重減少、毛のパサつき、視力異常などが現れます。さらに進行すると痙攣発作や昏睡状態に陥ることもあります。

尿毒症

腎機能に異常があると尿として排出すべき毒素がどんどん体内に蓄積していき、やがて体に様々な症状が現れるようになります。高齢になるにつれ発症頻度は高くなっていきます。

【症状】

嘔吐、下痢、食欲低下、元気消失、毛並みにツヤがなくなる、進行するとけいれんや昏睡といった症状を引き起こし、最悪の場合死に至ることもあります。

パルボウイルス感染症

パルボウイルスに感染した犬の便や嘔吐物に触ったり口にしたりすることで感染します。ワクチン接種で予防できる感染症なので毎年忘れずに打ちましょう。

【症状】

ウイルスに感染すると激しい嘔吐を起こして24時間以内に下痢をするようになります。(白~黄色のこともあれば、血便のこともあり)。あまりにも激しい下痢嘔吐であるため体内の水分が急激に奪われ、重い脱水症状から命を落とす子もいるほどです。

レプトスピラ症

3~4歳の若いオスに多発する非常に高い死亡率をもつ感染症。「不顕性型」(感染しても症状が現れないが尿中に病原菌はいる)、「出血型」「黄疸型」の3つの型に分けられます。ワクチン接種で予防することが出来ます。

【症状】

「出血型」は40℃以上の発熱が1~2日続いたあと、充血、口内出血、下痢、嘔吐、血便などの症状が現れます。「黄疸型」は黄疸(白目や歯ぐきが黄色くなる)、下痢、嘔吐、口内出血が突然現れ、急速に悪化していきます。どちらの型も死亡率は非常に高いです。

コロナウイルス感染症

コロナウイルスに感染した犬の便の臭いをかいだり触れたりすることで感染します。成犬が感染しても症状が出ることはめったにありませんが、免疫力の低い子犬が感染すると重篤な症状を起こすことがあります。これもワクチンで予防できる病気ですので毎年打つようにしましょう。

【症状】

嘔吐、下痢(水っぽいもの、もしくはオレンジ色の軟便)、元気消失、食欲低下などで、まれに便に血や緑色の粘膜が混じることもあります。嘔吐と下痢が続くと子犬はすぐに脱水症状を起こすので注意が必要です。

まとめ

以上、嘔吐がみられるときに疑う主な病気を一覧にしてまとめてみました。

「吐き出し」の場合

  1. 巨大食道症
  2. 食道梗塞
  3. 右大動脈弓遺残症

「嘔吐」の場合

  1. 急性胃炎
  2. 慢性胃炎
  3. 胃潰瘍
  4. 胃捻転、胃拡張
  5. 腸閉塞(イレウス)
  6. 腸重積
  7. 細菌性腸炎
  8. 出血性腸炎
  9. 急性肝不全
  10. 慢性肝炎
  11. 肝硬変、肝繊維症
  12. 膵炎
  13. 急性腎不全
  14. 慢性腎不全
  15. 尿毒症
  16. パルボウイルス感染症
  17. レプトスピラ症
  18. コロナウイルス感染症

上記がすべてではありませんが今回は特に発症率の高い疾患を中心に取り上げてみました。参考になれば幸いです。